螺旋階段 -30ページ目

すごく自由

自分が使いたい尺八の音を自分が出すためには、十年とかかかるわけ。
待っていられないよ。
その音をシンセサイザーでやれば、十分くらいでできる。
しかもいいことには、尺八だと、
日本の尺八の音だと分かっちゃうわけだけど、
シンセサイザーだったら、あいまいですむわけよ。
日本的でもあるし、しかし無国籍だし。
時代のどこに置かなくちゃいけないということもないしさ、
すごく自由なんだよね。
(村上龍・坂本龍一「EV.Cafe」より坂本龍一の発言)



自由というのは、時に重さを伴う。
けれど、坂本龍一氏はその重さを気に止める様子もなく、
シンセサイザーを使うことによって得られる自由を、
寧ろ便利なものとして楽しげに活用している。
こういう人が、本当に強いんだろうな、と思う。
(2004)




著者: 村上 龍, 坂本 龍一
タイトル: EV.Caf´e―超進化論

死ぬと

死ぬと儀式が完結するから、一番いいことなんだけどね。
(村上龍・坂本龍一「EV. Cafe」より村上龍の発言)



アルト・サックス奏者、阿部薫の死に関して。
ここでの「死」の取り上げ方は、スタイルの中での「死」であって、
生活に密着した実感のある「死」ではないけれど、
「死」という形が一番綺麗な終わり方、という場合も確かにあるだろう。
「死」は強力なパワーを持つものだから。
しかし、私は儀式の完結としての「死」など御免だ。
(2004)




著者: 村上 龍, 坂本 龍一
タイトル: EV.Caf´e―超進化論

だからいとしい

時代を渡る小舟の数え切れない中のひとつ
どうせはかないものだと だからいとしいはずだと
(篠原美也子「Fool in the Rain」アルバム「everything is passing」収録より)



どうせ他の誰とも大して変わらない私の人生。
何を達成出来るわけでもないあなたの人生。
所詮、最初から最後まで愚かでしかなく、
ありふれていて、大して何が残るわけでもない。
だからこそ、それは限りなく愛しくて大切なもので。
(2004)




アーティスト: 篠原美也子
タイトル: everything is passing

一人で

至暁子はなんと一人で堂々と生きた人だったろう。
一人で愛し、結果を誰のせいにもせず、
一人で道を決め、一切の執着を絶って生きた。
子供に頼ることもなく、
この地球の果てのような土地に住みながら、
寂しさや恨みを訴えたこともなかった。
至暁子は人生の最後に実にいい闘いを自らに挑んで死んだのであった。
(曽野綾子「時の止まった赤ん坊」下巻より)



マダガスカルで死んだ修道女、最上至暁子について語られる一節。
ここで一番大切なのは、「一人で愛し」という一文だろう。
そこを抜かせば、或る程度誰にでも出来ることのように思われる。
しかし、「一人で愛し」という言葉が入ると、
他の言葉のニュアンスまでまるで変わってくる。
愛しながら他人の所為にはせず、自分で決定し、
執着を絶つ、というのは本当に難しいことなのではないだろうか。
出来るならこういった風に生きて死にたいけれど、
私はきっともっと無様に死んでいくのだろう。
だとしても、少しでも近付きたいと思える人生の一つの在り方だ。
(2004)




著者: 曽野 綾子
タイトル: 時の止まった赤ん坊〈下〉

1回切りの存在

しかし一方ミクロにみれば、
一人ひとりの人はみんな違っていて、
一人として同じ人はいない。
この地球上に何十億と人間がいても、
まったく同じ遺伝子をもつ人がいないように、
一人として同じ人はいない。
一人ひとりは他で代用することのできない1回切りの存在である。
(飯田澄美子・見藤隆子編著「ケアの質を高める 看護カウンセリング」より)



よくよく考えたら、一卵性双生児以外は同じ遺伝子を持った人間、
という存在は有り得ない。
お金持ちも貧乏人も、権力者もアナーキストも、大人も子供も、男も女も、
遺伝子レベルでは一人一人が唯一無二の貴重な存在。
つい忘れてしまいがちだけれど、
腹の立つ上司も、うざったい親も、優しくない彼氏も、
遺伝子レベルではみんなみんな、貴重なたった一人の人間なのだ。
これから先、何億人間が生まれようと、
あなたも私ももう二度と生まれはしないたった一度の存在で。
(2004)





著者: 飯田 澄美子, 見藤 隆子
タイトル: ケアの質を高める 看護カウンセリング

忘れないでいて

差しのべられた腕をふりほどきながら
それでも風の中を歩いて行く
あなたの背中に親指を立てる
誰かがいること忘れないでいて
(篠原美也子「Good Friend」アルバム「everything is passing」収録より)



これが本当の友達だよなあ、と思う。
私の友達は皆、考え無しで向こう見ずで無謀な私に、
いつも「止めたら~?」とは言ってくれるけれど、
決してそれ以上のことはしようとしない。
助けを求めれば手を差しのべてくれるけれど、余計なお節介はしてこない。
わたしを変えようとはしてこない。
そんな友人達を本当に有り難いと思う。
失うものなんて何も無い人生、といつも思っているけれど、
この友人達は掛け替えのないわたしの宝で数少ない自慢の一つでもある。
(2004)




アーティスト: 篠原美也子
タイトル: everything is passing

痛いし辛い

「最初っから無いモノなら欲しくないじゃない。
痛くも辛くもないし。
なまじっか何か抱えてる方がきっと、
痛いし辛いでしょ」
(峰倉かずや「WILD ADAPTER」第1巻より)



この感覚にはとても覚えがある。
大切なものをもっていれば、
それにまつわる痛みや辛さがどうしたって生まれてしまう。
何も持たなければ、そんな痛みや辛さを味わうことも無い。
……でも、それでも私は自分が大切にしたいものを後生大事に抱えていたい。
それがどれだけ痛くて辛くても。
(2004)




著者: 峰倉 かずや
タイトル: WILD ADAPTER 1 (1)

男って凄く単純

これは男の三欲。
女にもてたい、金を持って目立ちたい。ケンカが強い。
男って凄く単純です。
(B'z Unreal Music「B'z TWELVE」より松本孝彦の発言)



そうね……男の人って、根っこのところにはそれがあるのよね……。
もっとも、さすがにストレートにそれを出してはこないから、
ややこしかったりする。
女はそれを見抜けず、男の囁く愛の言葉にはまったりして、
気付かないうちに、
お互い不自覚なままに泥沼が始まっていたりする。
(2004)

いつまで

この手はいつまで私の手を握っていてくれるだろう?
(神の計画社/室姫おるこ「神の計画」より)



これは私の根元にいつもある恐怖でもある。
特に恋愛をしている時に。
付き合い始めて、上手く行き始めて、
いわば蜜月、みたいな状態になった時に、
ふとこの恐怖に襲われる。
この人はいつまで私の側に居てくれるだろう?
この温もりを失ったら、私は一体どうなるのだろう?
そんな恐怖に襲われて、自分の方から別れを切り出してしまう
(そしていつも友人達に怒られる……)。
もう別れよう、もう止めよう、不安に駆られてそう思っていた時、
酔っぱらった相手の男に抱き付かれて、触らないで、と本気で思った。
でも、いい加減この恐怖も乗り越えていかなければいけないんだろうな、
とも思っている。
(2004)

この次はいつ来るの?

この次はきっとうまくいくからって慰めて
だけどふと思ってしまう この次はいつ来るの?
(篠原美也子「30's blue」アルバム「種と果実」収録より)



残念だったね、次があるよ。
自分にも他人にも投げかけがちな慰めの言葉だ。
でも、若さと勢いで走り抜けられる年齢を過ぎると、
ふと妙なことが気になったりする。
この次、って、あるの? それって、何時来るの? と。
未来が手の遠い存在のまま永遠に存在していると信じられた年齢の頃には、
思いもしなかった感情だった。
(2004)





アーティスト: 篠原美也子
タイトル: 種と果実