強くならざるを得なかった
村上 すごく傷つきやすかったり、
柔らかかったりするんだよ、
コアの部分は。
中田 うん。だからそのぶん武装というか、
いろいろなものを身につけて、
ひとりでどうにかやっていかなくてはいけないから、
強くならざるを得なかったというのが正直なところです。
(村上龍・中田英寿「文体とパスの精度」集英社文庫より)
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本当に強い人は、武装はしても、
それを外して構わない相手、
または外さなければならない時には、
外せるのだと思う。
本当の強さを持たないで、
ただ自分を守ろうと必死になって壁を築く人は、
常にその壁の中に閉じ籠もってしまう。
本当は弱い部分を見せなければならない人、
弱い部分を見せなければならない場面でも、
強い(ように見える)自分を貫き通してしまう。
……そういう私も、無意識に壁を作るタイプの人間なので、
必要な時には武装して、
不必要な時にはそれを外せるだけの、
柔軟性を身につけたいな、と思う。
- 村上 龍, 中田 英寿
- 文体とパスの精度