あなたが思ってるような人間じゃない | 螺旋階段

あなたが思ってるような人間じゃない

「ちがう!!
あなたは、おれに感謝する必要なんかないんだ!!
おれは――、あなたが思ってるような人間じゃないんだ……!!」
 
あなたが感謝を込めて見つめる度
おれは…
たまらなかったんだ――
(樹なつみ「OZ 完全収録版」第4巻/白泉社より)



天才家系・エプスタイン家の次女、フィリシアは、
兄のリオンが居るという理想の科学都市・OZへの旅の途中、
常に彼女を守り続けた傭兵・ムトーに恋心を抱く。
彼等は危険な旅の末、遂にOZに辿り着き、
フィリシアに感謝の言葉を述べられたムトーが、
意外な反応を見せる場面。
理由は後に明らかになるのだけれど、
ムトーはフィリシアに感謝されることに罪悪感を感じている。
そしてその罪悪感こそが、
彼がそれこそ命懸けでフィリシアを守り続けてきた理由だった。
罪悪感は、時に、人を動かす強烈な原動力になる。
そして、それを素直に表出することに苦痛を伴うので、
罪悪感は攻撃性や逆に愛情にも似た形で行動に表れることがある。
素直に謝罪出来れば一番いいのかもしれないけれど、
あまりに強い罪悪感は、なかなかそのまま表出は出来ない。
でも、時には罪さえ受容し、抱擁する愛も、存在するのだ。
「OZ」は、そういったことを静かに語る物語でも、ある。

(2005.6.26.一部改稿)




著者: 樹 なつみ
タイトル: OZ 4 完全収録版 (4)