空洞 | 螺旋階段

空洞

もう何年もたってるけど、

どうすればいいんだろうという思いは、

今も残ってます。

例えば『ヒュウガ・ウイルス』や『ピアッシング』を

中上さんはどう読むだろうか?

とよく考えます。

ぽっかり穴があいたというか、

空洞みたいなものがあって、

それは決して埋まらないですね。

とても孤独だし。

(「村上龍対談集 存在の耐えがたきサルサ」文藝春秋より、村上龍の発言)



村上龍が中上健次を亡くした喪失感を語る部分。

この発言を読んで、そうか、と思った。

開いてしまった穴は、埋めなくてもいいんだ、と思った。

孤独でもいいんだ、と思った。

空洞を抱えながら、それでも生きていくことが、

きっと、多分、大切で重要なのだ。

世間では淋しいこと、虚しいこと、孤独なことは、

まるで良くないことの様に言われているから、

つい勘違いしてしまうけれど、

必要なのは、それらを全部受け止めて抱え込んで、

それでもきちんと歩き続けることなのだ。

(2005.6.26.一部改稿)



著者: 村上 龍, 中上 健次
タイトル: 存在の耐えがたきサルサ―村上龍対談集