空洞
もう何年もたってるけど、
どうすればいいんだろうという思いは、
今も残ってます。
例えば『ヒュウガ・ウイルス』や『ピアッシング』を
中上さんはどう読むだろうか?
とよく考えます。
ぽっかり穴があいたというか、
空洞みたいなものがあって、
それは決して埋まらないですね。
とても孤独だし。
(「村上龍対談集 存在の耐えがたきサルサ」文藝春秋より、村上龍の発言)
*
村上龍が中上健次を亡くした喪失感を語る部分。
この発言を読んで、そうか、と思った。
開いてしまった穴は、埋めなくてもいいんだ、と思った。
孤独でもいいんだ、と思った。
空洞を抱えながら、それでも生きていくことが、
きっと、多分、大切で重要なのだ。
世間では淋しいこと、虚しいこと、孤独なことは、
まるで良くないことの様に言われているから、
つい勘違いしてしまうけれど、
必要なのは、それらを全部受け止めて抱え込んで、
それでもきちんと歩き続けることなのだ。
(2005.6.26.一部改稿)
- 著者: 村上 龍, 中上 健次
- タイトル: 存在の耐えがたきサルサ―村上龍対談集